「なぜ角度を求める問題の正答率は高いのか?」
これは中学校で数学を教え始めてからずっと疑問に思っていたことだ。
この理由が分かれば他の問題を教えるときにも役に立つので、仮説にすぎないが、ここにまとめていく。
僕が思いつくのは次の5つである。
①何を聞かれているのかがよく分かる
②仮定がよく分かる
③覚えておくべき定理が簡単
④論理が飛躍しても答えが合いやすい
⑤ある程度答えの確かめができる
次の問題を例に説明する。
①何を聞かれているのかがよく分かる
「∠xの大きさを求めよ」は何を答えればよいかが非常に分かりやすい。答えの形は「○○°」となるなとすぐ分かる。
一方「yはxに比例し、x=2のときy=6である。yをxの式で表しなさい」となると、「yをxの式で表すってどういうこと?答えはどんな形になるの?」となってしまう。
何を聞かれているか分からないのに答えを出すのは、旅行に例えると、目的地が分からないのに出発するのと同じだ。迷子になるに決まっている。いや、迷子になっているかどうかも分からなくなるだろう。
②仮定がよく分かる
角度を求める問題は仮定が図に起こされているので、一見しただけで条件が何を意味しているのかがよく分かる。
これが「yはxに比例し、x=2のときy=6である。yをxの式で表しなさい」となると、「比例するってどういうこと?x=2のときy=6ってどういう状況?」となってしまう。
仮定が分からないのに答えを出すというのは、旅行でいうと、今自分がどこにいるか分からないのに出発するのと同じだ。目的地に辿りつける可能性は限りなく低い。
③覚えておくべき定理が簡単
角度を求める問題で使う定理は非常に分かりやすいし、それほど多くない。
小学校ですでに習っている6つ
「二等辺三角形の2つの底角は等しい」「三角形の内角の和は180°」「四角形の内角は360°」「正三角形の1つの内角は60°」「平行四辺形の向かい合う角は等しい」「平角は180°」
中学校で習うが覚えなくても直感的に分かる2つ
「平行線の同位角・錯覚は等しい」「対頂角は等しい」
3年生になると「円周角の定理」が入るので覚えることが1つ増えるが、これだけだ。
他に「三角形の1つの外角は他の2つの内角の和に等しい」等もあるが、覚えておくと便利なだけで、覚えていないと解けないわけではない。
このように、角度を求める問題で使う定理は忘れにくいので、勉強していなくても使うことができるのだろう。数学から離れた大人でも角度を求める問題は考えてみたくなるのはこのためだ。
④論理が飛躍しても答えが合いやすい
例えば上の問題で「△ABCは二等辺三角形っぽいから∠Bと∠Cは同じだな」と勝手に条件を付けくわえる生徒がいる。完全に論理が飛躍していて、「こうであったら解けるから」という希望的観測でしかないのだが、困ったことに角度を求める問題では、これで答えがあってしまうことが往々にしてある。
実際この例の問題でも「△ABCが二等辺三角形である」と仮定したり、見た目60°くらいだから「∠B=60°」などと仮定しても答えは24°となる。これで答えがあっていて、できたと勘違いさせてしまうのが恐ろしい。
⑤ある程度答えの確かめができる
これは「①何を聞かれているかがよくわかる」とも関連するのだが、答えがどれくらいになるかが図を見ればある程度分かるので、間違いに気づきやすいという特徴がある。
例えば、上の問題で∠x=60°という答えが出たとしたら、「ん?なんか大きすぎないか?」とすぐにミスに気づいてもう一度考えなおすことができる。
これが例えば確率を求める問題で、答えが6/5になっても「なんか1超えている!」となる生徒は多くない。
また、答えがある程度予想できるという特性から
「なんか48°の半分っぽいし24°!」
とピンポイントであてに来る生徒もいる。これで当てられる量感覚は僕も欲しいところではあるが笑
以上の5つが角度を求める問題の正答率が高い理由だと考える。
僕も中学校のとき角度を求める問題は一生懸命考えてましたね。解けないとめっちゃ悔しかったの覚えています。数学苦手な子も角度求める図形の分野に入ると頑張って問題解くので、いつもこの分野には助けられています!